能力開発ニュース49号1999.4.5発行
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仙台市ガス局の調整員教育

           仙台市ガス局研修センター 庄司 陽一

■若者300人を育てる
 現在、都市ガス業界ではクリーンで長期的に安定したエネルギーの供給を目的に、全国の都市ガスの原料を天然ガスに切り替える作業が進められています。我が仙台市ガス局においても平成9年8月より7年3ヶ月をかけ、ガス器具台数にして100万台以上を調整する作業が始まりました。
 調整員教育とは、その作業の時に一軒一軒のお客様宅を訪問し、ガス器具の部品を天然ガス用に交換、調整する技術員を養成する教育で、仙台では平成7年6月から実施し、既にその卒業生も300人以上を越え現在も続いています。この教育は大阪ガスによりプログラムテキスト化され、東京ガス、東邦ガス、西部ガスと改良を加え継承され、現在は中堅ガス事業者の調整員教育に使われています。ガス業界では、プログラム学習が教育の定番となっています。
 仙台市ガス局の調整員教育の準備作業は、教育開始の3年前から計画され先輩ガス事業者のご指導と、能力開発工学センターの学習システム設計能力養成セミナーを受講(6名)して、「プログラム学習」を知るところから始まりました。先輩ガス事業者のお手本もありその準備は簡単かとも思われましたが、作業を進めていくとその作業量の多さと新しい事業に取り組む上で色々と障害もあり、プログラムテキストの作成、シミュレータ教材、実習器具の設置、機材の搬入、などほとんどの作業を外注にまかせずトレーナー(11名)自らの手作りとなりました。少々見栄えは悪いですが結果的にはトレーナーの熱意のこもった教材に仕上がりました。

 調整員教育は1コースが45日間。受講生12名をトレーナー3名で担当します。既に27コース実施しました。
 受講生の内訳は、始めの200名は仙台市ガス局の職員でその中でも150名は今回の作業で採用された新入職員で10〜20代の若い職員です。
また平成10年からは、東北地方の中小ガス事業者も共同で天然ガス転換の作業を目指す事になり、平成11年5月開始の盛岡ガスを支援するための調整員教育となり、自職員だけでなく東北各地のガス事業者を対象とした教育となり、すでに100名(10〜20代中心)以上が研修を修了しています。

■探究行動を現場で活かしてほしい
 教育を実施してみて感じることは、始めのうちは試行錯誤を重ねながらのコース運営でしたが、慣れるにしたがって受講生の行動と学習のポイントもおおむねつかめるようになり、我々のような素人トレーナーでも一定のレベルの教育ができ、受講生の感想も「今までの勉強と違ってわかりやすい」「自分のペースですすめる」「眠くならない」など評判もおおむね良好で一応の目標は達成されたものと思っています。

 その反面、最近の社会風潮か長髪、茶髪、ピアス、おしゃべり、携帯電話など様々な個性を持った受講生も現れ、少々マンネリ化しているトレーナー陣にとっては、いい刺激となっていますがコース運営上の新たな課題でもあるように思います。受講生は教育修了後、現場OJTと進み、本番作業を迎えますが担当したトレーナーとしては、現場OJTの報告など第三者からの評価もまた気になるところです。
 非常に残念ではありますが教育修了後この仕事をやめる者も中にはいますが、この教育で身についた探究行動は別の場でも必ずや活かされるものだと思っています。

■見学歓迎
 今後の予定としては、2月〜5月にかけて傷んだ実習器具の大幅入れ替え作業やそれに伴うプログラムテキストの新規作成を予定しており、能開セミナーの夜食を思い出し初心に返ってまた準備を進めたいと思います。
 最後にこの教育でご指導いただいた能力開発工学センターの皆様に、この場をお借りしてお礼申し上げたいと思います。
 関心のある方は見学OKです。お近くにお越しの際はお気軽にお寄りください。

ガス業界においては、ここ数十年にわたって天然ガスへの転換という一大事業がおこなわれている。1969(昭和44)年に東京ガスが天然ガスの導入を開始し、約20年かけて完了、続いて大阪ガスが1990(平成2)年に、東邦ガスが1993(平成5)年に完了している。この間、各社とも事故もなくすべてを完了したという実績である。 天然ガスは「クリーンな省エネルギー」として環境問題への対応には最も好ましいエネルギーのひとつとして評価されている。現在は、上記3社に次いで転換事業を推進中の、仙台市ガス局等中堅都市ガス事業者が事業を行いやすくするため、(財)天然ガス導入促進センターが中心になって「IGF21計画(Integrated Gas Family 21計画)」が検討され、2010年までにできるだけ広く天然ガスに切り替えていこうという計画である。 ガスの転換に伴って大量のガス器具を調整する作業があり、各社ともそのための調整員の養成に精力的に取り組んできている。この調整員教育はすべて能力開発工学センターの方式で行われている。先進会社である大阪ガス等が開発した自学自習を可能にするプログラムテキストと豊富なシミュレータ教材からなる学習教材を基に各社の独自性を加える形で教材が開発され、使用されている。そして、教材開発と指導にあたるトレーナーの主力部隊は能開セミナーに参加している。これまでに全体で10社から137名が受講している。 これら多くの人々の努力によって、業界ぐるみの本格的能力開発が展開されている。(編集部)

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