能力開発ニュース49号1999.4.5発行 能力開発ニュースのページ JADEC-TOPページ |
「教育革新の思想・テクノロジー・展開」(矢口 新 選集)に寄せてD JADECビジネスディレクター 山口 幸次 かつて金儲けのための教育などという思想で教育の姿勢を色づけていたものの根底が揺らいできた。企業利益という点だけの狭い視野からの忠誠心では一般の従業員を納得せしめることはできなくなっている。そこから企業は価値の伝達ということについて根本から考え直す必要に迫られている。企業は今や全体社会の中で全体の発展に対して貢献しているものでなければ存立し得なくなりつつある。地域社会の人々の幸福に寄与しなければ存在を否定されることを企業活動の根底として考慮しなければならない。 (矢口 新 選集第6巻 186頁より) 人生の目的は何かという古今の大哲学者すら悩ませた難問には、各々各自が考えを持っているであろう。敗戦直後は“食うために生きる”という欲求が万人の生きる目的であった。企業もアメリカの企業力を目指して効率第一で進んできた。質より量の時代であった。この場合、経済力の強化が即ち企業の目的であり、いかにして、どれだけ早くという技術面だけを考えれば良かった。手段が目的と化してやっていけた時代であった。もちろん大多数の人間にとって本来は生きるために食うのであり、本来は豊かな人間社会を作るための経済力であるはずである。しかし、当時は人間はいかに生きるべきか、豊かな人間社会とはどういう社会か、については学校でも社会でも議論されることは少なかった。真の目的を忘れたままの質より量の拡大はついに1990年代初頭には世界10大銀行のうち8行の日本の銀行がランクされている。そして10年後、今これら銀行の現状は周知の通りで我々には想像を絶する金額の不良債権が議論されている。何のためにという価値や目的の選択の議論はせずに、手段である経済力の拡大のみを追求してきた結果である。 かつて会社の幹部には会社は組織で動くものであり自分の主義主張は殺して行動するタイプが多かった。ここから生まれるのは個人として清廉潔白であれば組織員としてウソをついても許されるという発想である。組織の共存共栄という名の談合・癒着はその典型である。そして許されるはずであった個人が罰せられている。複数なら悪いことができるようになるのは国民性であろうか。 何かの書物で読んだ話であるが、船が難破し、まず女性子供を救命ボートで脱出させたが、救命ボートが無くなり、怖がる男性達を飛び込ませるためのセリフが面白い。
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