能力開発ニュース52号2000.8.28発行
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プロジェクトが意欲を生む

      能力開発工学センター研究開発部長 矢口 哲郎

 長く企業の中で働く人々の教育に携わってきましたが、この数年大学の情報教育にも関わるようになり、感じていることがあります。
 今の学生は非常に多様で直感的ですが、授業で学習目標、課題、そして自ら取り組む方法を具体的に提示すると、自分で調べ、考え、大変真剣に意欲的に学習します。ですから、「学習意欲がない」といった批判は、教育を行う側が多様な現代の学生に合わせた授業を行えないからだと思っています。
 企業の中の教育は、「課題」が具体的で、それを乗り越える力が育てるべき目標となります。例えば、物を作る製造現場では、「新製品を作る」「品質を向上させる」「工場の環境改善」などの課題が山積みですが、これらは単なる問題ではなく、何とかして越えなくてはならない切実なものです。現場で働く人々は、こうした課題に対して現実を調べてデータを収集し、分析し、次にやるべき事を考え出すなどの力を身につける必要があります。
 こうした能力を育てる教育は、現実に即し出来るだけ学習者に合わせた『課題を解決するプロジェクト(活動)』を設定し、その中に必要な知識、技術を位置づけて行うと、学習者は自分の決断により解決へ向かって進めていくという責任ある場に置かれ苦労しますが、それが学習者を大変意欲的にします。
 一方学校教育では具体的な目標、課題の前に教えるべき知識、技術があって、それをどう与えるかが問題となります。そこから出てくる活動は、「何かを知る」「やってみる」「発表する」というあまり責任のない場になり、それが逆に意欲につながらないことになります。
 学ぶ者を意欲的にさせるには、『自分がなんとしても乗り越えたいと強く思うような課題を用意し、それを突破して自分に結果が戻ってくるようなプロジェクト』を作ることだと考えていますが、それには教員が学校の外へ出る必要があると思います。大学の情報教育で「企業のネット化、HP作成などを引き受ける」、「小中学校で子供たちにパソコン、インターネットを教える」というようなプロジェクトを学生にやらせてみることは出来ないかと考えているところです。
(本稿は、全国視聴覚教育連盟の機関紙「視聴覚教育時報」に執筆掲載したものである)

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