●研究成果を発表しました
その1 レポートに内在する学習者の姿勢を読みとる
―方法論と事例を雑誌「看護教育」に発表―
ここ2,3年表題に掲げた試み(東京女子医科大学看護大学 大森武子教授、福島県立医科大学 大下静香教授との共同研究)を続けてきましたが、このほど、看護教育担当者向けの雑誌「看護教育」(医学書院)6月号に「特集 学生の主体性を読みとる−行動姿勢の視点から」として発表しました。
これは、看護技術者として最も大切なのは、教えられた結果の知識量ではなく、自ら情報をとるとか、受け取った情報を鵜呑みにするのでなく過去の経験や知識と総合整理するとか、物事を構造づけたり他の物事と関連づけてとらえるといった、行動の姿勢であり、それを読みとる力、育てる力が教育担当者に欠くべからざる能力であるとの考えから進めてきたものです。
今回発表したのは、その読みとる力のところに焦点をあてたもの。看護短大生約100名の学科授業及び臨地実習終了後のレポートを対象に、問題のとらえ方、整理のしかた、関心の寄せ方、記述のしかたなどから、行動姿勢を分析、読みとる方法とその具体事例を紹介しました。読みとる視点は 1.構造的把握力 2.咀嚼力 3.行動的把握力 4.自己学習力 5.主体的行動姿勢 6.感受性 の六つとしましたが、これは育てるべき人間像から決まってくるもので、対象に応じて変わるものですが、方法論は看護学生に限らず、企業の人材育成などに活用できるという手ごたえを感じています。
その2 「けつあつくん」について、看護研究学会で発表
昨年特許取得した血圧測定原理学習用シミュレータ(商品名「けつあつくん」)について、日本看護研究学会の学術集会(7月30日、於弘前市)にて二つの発表を行いました。
一つは、その「開発のねらいとその構成」を矢口が発表。血圧測定の際に血管の中で起こる現象をシミュレーションし、それを自分の目と耳とで確かめられる、自分で組み立てられる簡単な装置を開発しました。さらに、物事の原理をとらえる学習で大事なのは、そのことを知ることではなく、思考のプロセスをつかむこと、そしてそのための学習教材は、単に決まった現象を観察するためのものでなく、学習者の発想、予測、計画などの主体的な働きかけを促し、それに応えるものが必要との考えを発表しました。
もう一つは、共同研究者の大下静香氏が、同シミュレータを使っての授業に対する看護短大生80名のアンケート調査の結果を発表。「イメージしやすく理解が深まる」といった学習理解への効果(85〜99%)以外に、「目に見えるので面白くやる気が出る」「自分で操作するので興味がわく」「グループで実験しながら考えるので楽しい」といった学習への意欲の面で特に大きな効果が見られた(94%)ことを発表しました。
(矢口 みどり)
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